元皇女なのはヒミツです!
にわかに顔が上気した。彼女の言う通り、それは私の一番大切な婚約者からの手紙だ。
「まぁっ、これも図星? あんたってどれだけ男好きなのかしら。嫌ねぇ、平民は」
「グレース、それをリナに返せ! なんでそんなことをするんだ!?」
「なんでって……愚かな平民に学習してもらうためよ。あんたも貴族なら分かるでしょう? この女は危険よ。このまま放っておくと王太子殿下まで危険が及ぶわ。この女はエカチェリーナ様から殿下を奪うつもりなのよ。……だから、大切なものを失う気分を味わってもらうわっ!!」
グレースは呪文を唱え燃え盛る炎を眼前に放つ。火炎は私たちの目の前に壁のようにみるみる広がった。炎で照らされた彼女の瞳は暗く濁っていて、思わず鳥肌が立った。まるで暗い影が彼女を取り込んで食っているみたいだった。
「猛省しなさい、平民」
彼女は持っていた手紙の束を炎の中にポトリと落とした。