元皇女なのはヒミツです!

「あんたが泣き喚く姿なんて初めて見たわ。愉快ねぇ」と、グレースは次々に手紙の束を火炎の中に放り込んでいった。

「やめてぇぇぇぇぇっ!!」

 私は金切り声を上げて大音声で叫ぶ。
 すぐにでも火の中に入ってフレデリック様の手紙を取り戻したい。でも、セルゲイの頑丈な肉体はいくら力を込めても振り払えなかった。

「あはは! いい気味だわ!」

 グレースの手は止まらない。手紙の束はどんどん燃えてなくなっていく。
 私たちの思い出も灰になっていく。
 フレデリック様が……消えていく。

「やめろ、グレース! こんなことをやっても、君が後悔するだけだ!」

「はぁ? あたしが後悔? なにを馬鹿なことを言っているの? 平民はこれを機に自身の言動を省みることね」

「……っく…………ひっく…………フレ……デリック様……………………」

 私は蚊の鳴くような声で彼の名前を呼ぶ。
 でも、返事が来るはずがない。
 火の勢いが強くなった。
 辺りもだんだんと暗くなって、影が濃くなった。
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