元皇女なのはヒミツです!
「そんなっ……!」グレースの双眸に再び涙が滲んだ。「エカチェリーナ様は王太子殿下の正式な婚約者ではありませんか! 現に王太子殿下もあなたのことを探していらっしゃいます! それを諦めるなんて……!」
「いいのよ。もともと連邦国の副大統領から言われているの。決して正体を明かしてはならない、って。ほら、私が生きているとなると色々と面倒なことになるでしょう? 最悪、またアレクサンドル国民の命を犠牲にしてしまう可能性だってあるわ。それに、リーズ王国をも混乱の渦に陥れることになるかもしれない。国王陛下はもうフォード侯爵家に向けて舵を切ったみたいだから。そこに私が実は生きてましたってのこのことやって来て、リーズ王国の内政まで掻き乱すのは良くないと思うわ」
私は精一杯の笑顔を二人に向けた。我ながら酷く引きつった変な顔をしていたと思う。
エカチェリーナは死んだ。
その事実を覆すことは、フレデリック様に大きな迷惑を掛けることだろう。
手紙が燃えてなくなったのは図に乗った私への天からの戒めなのだ。
エカチェリーナは、絶対に外へ出て来てはならない。
私は……平民だ。