元皇女なのはヒミツです!
「エカチェリーナ様……」
「だからもう皇女だったことはなかったことにして、平民のリナとして慎ましく生きることにするわ。それが皆にとって幸福になる最善の道なのよ。ね?」
グレースは涙を流しながら首を左右に振って、
「そんなの、駄目ですっ……! エカチェリーナ様だけが我慢をしなければならないなんて……そんなの絶対におかしいっ!」
「いいのよ、グレース。なんだかもう疲れちゃったの。これを機会に私はもうフレデリック様のことを……忘れ……忘れ…………」
続きの言葉が出なかった。
その代わりに、滂沱の涙が再び流れる。
私は、フレデリック様のことを――、
「わ、私はっ……わた…………わあぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!」
にわかに張り詰めていたものが決壊して、私は小さな子供のように声を出してなりふり構わずわんわん泣いた。
「エ……エカチェリーナ様っ……! あ、あたしのせいで……。本当にごめんなさいっ……! ごめんなさ……わあぁぁぁぁぁぁぁぁああっっ!!」
呼応するようにグレースも咽び泣く。
それからしばらく私たちは互いに抱き合って疲れ果てるまで泣き続けた。
セルゲイが大きな身体で震える二人を強く抱きしめてくれた。
もうすぐ、夜が来る。