元皇女なのはヒミツです!

 私はポケットからハンカチを取り出して彼女の煤けた顔を拭いてあげた。

「私は回復魔法が使えないからここまでしか綺麗にできないけど、帰ったら汚れを落として今日はゆっくりと休んでね。火傷は大丈夫かしら?」

「あたしは炎属性ですので問題ありませんわ。お心遣い痛み入りますわ、殿下」

「もうっ、いつも通りでいいって」私は苦笑いをする。「じゃあ、帰りましょうか。たくさん泣いたらお腹空いちゃった」

「グレース、リナは俺が送るから大丈夫だ。傷付いた君を一人で帰して済まないが、今日は勘弁してくれ」

「あたしは平気よ。セルゲイ、エカチェリーナ様を頼むわよ」

「おう」

「無礼のないようにしなさいよ!」

「当たり前だろ」

「あまり殿下にべたべた触ることのないように!」

「分かってるって」

「殿下はあんたのものじゃないんですからね! たまたま同郷だからって調子に乗るんじゃないわよ!」

「なんなんだよ、その手のひら返しは。早く帰れよ」

「ふふっ、グレースったら」

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