元皇女なのはヒミツです!
正気付いた私は彼を少し押し返して、
「セルゲイ、離して」
「あ……ごめん」
私たちはゆっくりと身体を離した。
「ごめんなさい……。私、まだ気持ちの整理が……」
さっきは強がってフレデリック様のことを忘れるなんて言ったくせに、私の心はまだ彼に囚われていた。諦めなければいけないと思えば思うほど、彼の顔が頭に浮かんで離れない。
「そっか……そうだよな。突然リナを困らせるようなことを言って悪かった」
「ううん。あなたの気持ちは嬉しかったわ。ありがとう」
「なぁ……まだ卒業まで2年あるから、じっくり考えてくれないか?」
「えっ」
私はドキリとして目を見張った。そんなことを言われても困るわ。
「俺は君の気持ちが自分に傾いてくれるまで待ってるから。結論はゆっくりでいい」
「そんなの……無理よ」
これが今の私に答えられる唯一の言葉だった。現に今もフレデリック様のことを考えている自分がいる。こんなのセルゲイに不誠実すぎる。
セルゲイはふっと微笑んで、
「君が俺のを好きになってくれるように努力するよ」
「…………」
私が困惑して押し黙っていると、彼は「おやすみ」と言って静かに部屋から出て行った。
一人になった途端に私はすっかり力が抜けて、倒れるようにベッドに転がり込んだ。何時間も頭上に雪が積もったみたいに、頭がずっしりと重かった。
今日はいろいろな出来事がありすぎて、ただただ疲れた。今はもうなにも考えずにこのまま眠りにつきたい気分だ。
自然と深いため息が出た。
「どうしよう……」
私はゆっくりと瞳を閉じた。