元皇女なのはヒミツです!



◆◆◆





「あら、面白いものを見ちゃったわ」

 影は潜んでいた。光と対になるそれは、暗闇に紛れて彼女たちを見ていた。

 伯爵令嬢と平民を同時に沈めることは叶わなかったが、代わりに興味深いものを見させてもらった。
 まさかとは思っていたが、本当にあの平民が皇女エカチェリーナだったとは。

 皇女は、邪魔だ。

 生きていたと分かると、あの王太子はどんな手を使ってでも皇女を王太子妃に迎えるだろう。さすがに王太子を正面から敵に回すのは厄介だ。

 だから……王太子に見つかる前に処分しなければ。

 皇女の死亡の発表で、一度は断腸の思いで諦めた王太子妃の座がせっかく自分に転がり込んで来たのだ。
 今度は絶対に譲らない。



「さて、どうしましょうか……?」

 フローレンスは楽しそうな顔で冷たく呟いた。

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