元皇女なのはヒミツです!
「リナ、おは――げっ! グレース! なんだ、その可愛らしい髪型は!?」
そのとき、セルゲイがやって来た。彼もグレースの変貌に驚いたようで唖然として彼女を見ている。
「セルゲイ、遅いわよ」グレースは彼の反応なんてお構いなしに澄まし顔で言った。「そんな体たらくじゃ、リナはあたしが護衛をしたほうがいいわね。男のあんたより女のあたしのほうが自然だわ。リナに変な噂が立つと困るし」
「はぁ?」
「行きましょ、リナ」と、グレースは私の腕をぎゅっと両手で掴んで歩き始めた。
「ちょ、ちょっと……!」
「お前、昨日の今日で露骨すぎるだろ……」
「いいのよ、あたしたちは親友なんだから! ね、リナ?」
「え、えぇ……」
「リナ、友達は選べ!」
セルゲイは文句を言いながら私たちの後ろを歩いた。
私はちょっとほっとした。昨日あんなことがあって、今日は彼にどんな顔をして会えばいいか分からなかったのだ。
どうしても抱きしめられた瞬間を意識してしまう。だからグレースが緩衝材になってくれて正直助かった。彼女を挟んで普段通りに彼と会話ができて、とりあえず一安心した。
このまま普通に、普通に……。