元皇女なのはヒミツです!
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アレクサンドル連邦国副大統領のアレクセイ・アレクセイヴィチ・カトコフは緊張した面持ちで扉の前に立っていた。これから要人との面会が始まるのだ。
彼は諸国を外遊していた。新しい政治体制になってまだ日が浅い連邦国は諸外国との新たな関係を築くべく、外交に力を入れていた。今回は副大統領自らが足を運んで諸国の要人たちと会談をしているのだ。
そして連邦から西にあるルチアーノ公国に着いた頃、秘密裏に彼に非公式での面会の要請が来たのだった。
その相手はリーズ王国王太子のフレデリック・リーズだった。
胸騒ぎがする。
アレクセイは気が張って固くなった肉体を気合で無理矢理に動かして、重厚な扉を開けた。
「久しいな、副大統領よ」
扉の向こうにはエカチェリーナ・ニコラエヴナ・アレクサンドル皇女の元婚約者であるフレデリック・リーズ王太子が鷹揚に構えて彼を待っていた。
それと正反対に、ピリピリとした剣呑な空気が場を支配していた。