元皇女なのはヒミツです!
「この目で皇女の生まれた地を実見できて感激したよ」
「それは宜しゅうございました」
またぞろ嫌な汗が流れる。
フレデリックが連邦国に足を踏み入れた時と入れ違いにエカチェリーナは国外へ出て行った。もう少し遅れていたら二人は鉢合わせしていたかもしれないし、最悪のタイミングで王太子が皇女暗殺計画に巻き込まれたかもしれない。仮にそうなっていたら、新興国である連邦はすぐさま解体されてしまっていた可能性もある。
「固くなっているな。まぁ、茶でも飲みたまえ」
「はっ、はい……!」
アレクセイは給仕された紅茶をごくごく飲んだ。先程から酷く喉が乾いていたので王太子の勧めは有難かった。だが極度の緊張で、王族が飲むような高級な茶葉も全く味がしなかった。
対する王太子はゆっくりと紅茶を口にする。その上品な仕草は生まれ持っての高貴な身分を見せ付けられるようで、アレクセイは決して埋まることのない身分の差というものを改めてひしひしと感じたのだった。