元皇女なのはヒミツです!
「えっ……?」
オリヴィアは困惑した表情でフローレンスを見た。
リナの秘密? グレースが知った? わたしは、そんなの聞いていない。
頭の中がじわじわと仄暗く染まっていく。
「リ……リナの秘密って……?」
オリヴィアは震えた声で尋ねる。卒然と胸が早鐘を打った。
自分は知らなくて、グレースは知っている、親友の秘密。
知りたいけど、知るのが怖い……。
フローレンスはニヤリと不気味な笑いを浮かべて、オリヴィアの眼前に人形のような顔を近付けた。ちょうど西日が差して、校舎の影で二人を黒く包み込んだ。
「リナさんの本名はエカチェリーナよ。あとは言わなくても分かるわよね……?」
「そんなっ……!?」
オリヴィアはあまりの衝撃に総毛立った。しばらく息をするのも忘れたほどだ。目がチカチカして耳がキンキンと鳴り響いた。
リナが……エカチェリーナ様?
そんな、ありえない!
でもフローレンス様が嘘をつくはずがないし、近頃のグレースの軟化しすぎた態度を見る限りでは、リナがエカチェリーナ様だからこその姿勢なのだと頷ける。