元皇女なのはヒミツです!

52 扉を開く

◆◆◆



 曇り空に比例するように、オリヴィアの心も靄がかかっていた。
 彼女はさっきから扉の前でぽつねんと立ち尽くしている。頭の中は怒りと悲しみと憎しみが、不協和音のようにぐちゃぐちゃと反響していた。

 リナは自分に嘘をついていた。
 親友の自分よりいじめっ子のグレースのほうがリナから信用されている。

 その二つの冷酷な事実にひどく苦しめられた。
 リナは笑顔で話しかけてきて、裏ではなにも知らないわたしのことを嘲笑っていたんだ。セルゲイもグレースも一緒になって……。

 フローレンス様からはリナが皇女だと証明できる物を持って来なさいと言われた。
 どこかに必ずアレクサンドル帝国の皇室に代々伝わるブルーダイヤの首飾りがあるはずだ、と。それを使ってちょっと彼女を懲らしめてあげましょう、と。
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