元皇女なのはヒミツです!
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「お父様っ、公爵命令でリナをもう一度わたしの家庭教師に戻してっ!」
アメリアは父親のシェフィールド公爵に抱きつきながら懇願した。
もう10分以上もこんな状態で、執務で多忙な公爵を辟易させていた。リナのおかげで最近はとても良い子になったのに、また元の木阿弥だと公爵は眉根を寄せる。
「アミィ、嫌がっている人に対して無理に物事を強制するのは良くないことなんだよ。リナ先生から教わっただろう? 学んだことはちゃんと実行しないと」
「だからぁっ! そのリナ先生じゃないと駄目なのぉっ! 正式に公爵家の命令だったらリナも従うでしょう!?」
「だから、それがいけないことなんだよ……」公爵は困ったように頭を掻いた。「そうやって命令を出して下の者を力尽くで従わせると、反感を買っていずれは自分たちの首を締めることになるんだよ。どんな者でも心を持っているんだ。そこに貴賤は存在しない。我々高位貴族はそのことを忘れてはいけないよ」
「だったら! リナだって元高位貴族なのよ! それこそ無理矢理にでもわたしたちと一緒にいるべきだわ! 高位貴族が没落して平民になるなんて、悲しすぎるじゃない……」と、アメリアはみるみる瞳を潤ませた。