元皇女なのはヒミツです!

「なんだって……?」

 公爵は目を見張った。そんなの初耳だ。

 以前、娘からリナが元貴族らしいと聞かされて本人に確認したことがある。そのときは「貴族といっても男爵令嬢だったので平民とさほど変わらない」とあっけらかんに返された。

 たしかに気の毒だと同情はしたが、本人も平然としていたのでさほど気にはならなかった。
 もし彼女が貴族に戻りたいと望むのならばリーズ国内の男爵か子爵家を養子先に紹介しようと思っていたが、本人が平民の自分としての実力を試したいと意気込んでいたので、特に自分のほうからは動かなかった。

 しかし、高位貴族となると話は別だ。高貴な血筋を市井で野放しにして良いものだろうか。

 いや……。

 公爵ははっと我に返る。思わずぶるりと身体が冷えた。
 アレクサンドル帝国では多くの犠牲が出たという。元より力の弱い下位貴族たちは革命の渦で没落してしまう家門も多くあったらしい。

 だが、

 帝国の高位貴族が没落したなんて話はあっただろうか……?
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