元皇女なのはヒミツです!


「お父様?」

 瞑目して思考する公爵を不審に思ってアメリアが不安そうに声をかけた。

「どうなさったの?」

「アミィ」公爵はしゃがみ込んで娘と目線を合わせる。「リナ先生は本当に元高位貴族だったのか?」

 アメリアはこくりと頷いて、

「フレディお兄様が言っていたわ。リナは下位貴族だって言っているけど、おそらく高位貴族だろうって」

「そうか……」

 公爵はフレデリックが今回の視察の前に自分に妙なことを懇請してきたのを思い出した。理由は聞かずにシェフィールド公爵家の騎士たちを貸してくれないか、と頼み込んで来たのだ。

 彼は首を傾げながらも、快諾した。
 フレデリックのことだ、おそらくエカチェリーナ皇女殿下の捜索の際に国王側からの圧力で身動きが取れなくなった時のための保険なのだろう。可愛い甥のために自分が一肌脱ごうじゃないか。

 ……そんな半ば親心のような気持ちで即諾したが、そのときには既に甥の中で答えが導き出されていたのだろう。
< 262 / 371 >

この作品をシェア

pagetop