元皇女なのはヒミツです!
「アミィ、このことはお前たち二人以外には誰も知られていないな?」
「えぇ。よく分からないけどフレディお兄様が誰にも言っちゃ駄目だって言っていたわ。――あ、でももしかしたらセルゲイは知っているかも」
ストロガノフ公爵令息か……と、公爵はニッと口の片端を上げた。
これはもう、確実だろう。フレディの奴、婚約式の前にひと暴れするつもりだな。ここは叔父として手を貸すとしようか。
「アミィ、この件は絶対に誰にも漏らしたら駄目だよ。公爵命令だ」
「おっ……」アメリアの顔がみるみる赤くなった。「お父様がさっき公爵命令で無理矢理従わせたらいけないって言ったじゃない!」
「ははは、そうだったかな?」
「もうっ、ふざけないで!」
「アミィがちゃんと黙っていたら、お父様がリナ先生にもう一度アミィの家庭教師になってもらえるようにお願いしてあげるよ」
にわかにアメリアのつぶらな瞳が輝きだす。
「本当? 本当なの、お父様!?」
「あぁ、もちろんだとも」
「きゃあっ! ありがとう、お父様!」と、アメリアは大好きな父親に思いっきり抱きついた。
「それまでアミィは良い子にしておくんだよ。さぁ、もう部屋に戻ってお勉強の続きをしなさい」
「はぁ~いっ!」
アメリアはスキップしながら去って行った。その令嬢らしからぬ行儀の悪さに公爵は思わず苦笑いをする。
そして愛娘が廊下の向こうに消えた次の瞬間、侯爵は打って変わって険しい面持ちでシェフィールド家の騎士団長のもとへと向かって、扉を叩いた。