元皇女なのはヒミツです!
「……なに?」とオリヴィア。
それはたった一言だけど氷のような冷たい語気で、普段の彼女とはかけ離れている姿に私は背筋が寒くなった。
なんだか、いつものオリヴィアじゃない感じ。
グレースは怯まずに、
「リナはこれからあたしとハートの噴水を見に行くのよ! 勝手に連れて行かないで!」
「それだったらわたしがリナを連れて行くわ」
「はあぁぁぁっ!?」
「グレース、セルゲイ!」剣呑な雰囲気の二人を引き裂くように、私は大声で彼らの名前を呼んだ。「悪いけど、私はしばらくオリヴィアと回るわ。そうね……一時間後にここで落ち合うってことでいいかしら?」
「そんな――」
「分かったよ、リナ」私の意図を察したのか、セルゲイは今にもオリヴィアに掴みかかろうとするグレースを制止して「しばらく二人で楽しんできてくれ」
「ありがとう。じゃあ、またね。さ、オリヴィア、行きましょう?」
今度は私からオリヴィアの手を取って一緒に歩き出した。彼女はニコリと微笑む。でも、そこには彼女らしい陽だまりのようなほっとする温かさはなかった。
私は隣を歩くオリヴィアをちらりと見やった。どう見ても様子がおかしい。
彼女とは最近ゆっくり話ができなかったから、その間になにか不穏なことでも起きたのかしら。私になにかできることがあればいいんだけど……。