元皇女なのはヒミツです!
「行きましょう」と、オリヴィアは私の戸惑いなんて気にも留めずに中へと入って行く。
私は慌てて彼女を追い掛けて、
「ちょっと、オリヴィア! 一体どうしちゃったの? なんだか変よ」
オリヴィアはふと足を止めて振り返る。彼女の表情に思わずぞっとした。瞳からは輝きが消えて、まるで血の通っていない人形のように感情が消え去っている。
「変……?」
「そ、そうよ。なんだか、いつもの優しいあなたじゃないわ。なにかあったの……?」と、私は彼女の纏う空気に気圧されながらもおそるおそる尋ねた。
「なにかあった?」彼女は冷笑する。「あなたがわたしをずっと欺いていたんでしょう?」
「えっ……!?」
私は凍り付いた。真冬の小川に浸したように、指先が瞬時に冷たくなる。
私が……欺く? 親友のオリヴィアのことを? そんなの、あり得ないわ!
オリヴィアは再び前を向いてすたすたと歩いて行った。
「ま、待って!」と、私も彼女を追う。