元皇女なのはヒミツです!
屋敷の中は黄昏のように仄暗くて、覚えずぶるりと背中が寒くなるくらい薄気味悪かった。
オリヴィアは奥の部屋へと向かう。不安を覚えながらも付いて行くと、扉の隙間からぼんやりと明かりが見えた。
中に入ると――、
「あら、意外に早かったのね」
「フローレンス様!?」
そこには、フローレンス・フォード侯爵令嬢が優雅に椅子に腰掛けて悠然と待ち構えていた。
彼女はこれから国の公式行事でも参加するのかと思わせるようなシルクのローブモンタントを着ていて、嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべていた。
「ど……どういうことですか?」
私は動揺のあまり二、三歩あとずさった。オリヴィアとフローレンス様……なぜ二人が一緒にいるのか、なぜ私をこの場に呼んだのか……わけが分からない。