元皇女なのはヒミツです!
「あっはっ!」
はっと我に返ると、フローレンス様がおかしそうに声を上げて笑っていた。その姿は普段の優美な淑女の彼女と乖離していて、ぞわぞわと鳥肌が立った。
「おっかしい~。ねぇ皇女様、あなたって本当に惨めで滑稽な人生ね。婚約は解消になって、平民落ちして、そして友情も壊れて……いっそのこと革命で華々しく散っていたほうが幸せだったんじゃない?」
「なんですって……」
怒りで、身体が揺れた。目の前の無礼な侯爵令嬢を思い切り睨め付ける。
「あはっ、怒ってるの? でも平民如きに激昂されても痛くも痒くもないわ。――さ、時間がないわ。そろそろ仕上げといきましょうか。ミルズ男爵令嬢、例のものを出しなさい!」
侯爵令嬢がオリヴィアに視線を向けると、彼女はおもむろにポケットから巾着袋を出した。そしてゆっくりとその中身を取り出す。
「それは……!」
オリヴィアが手にしたものは、アレクサンドル皇家に代々伝わるブルーダイヤモンドの首飾りだった。