元皇女なのはヒミツです!
「なぁんですってぇ……!」
侯爵令嬢の美しい顔がみるみる醜く歪んだ。
「オリヴィア、私――」
「ごめんね、リナ。わたし、はじめはあなたのことを疑って……憎んでいたの。でも、改めてあなたと出会ってからの日々を思い起こしたら、それは間違いだって気付いたわ。リナはわたしの一番大切な友達だから。わたしは……あなたを信じる」
「オリヴィアっ!」
私は飛びつくように勢いよく彼女に抱きついた。瞳から滂沱の涙が溢れ出る。
オリヴィアは自身が傷付いても私のことを信じてくれて……なのに、私は自分のことばっかりで、彼女の気持ちも考えずに、なんて酷い仕打ちをしたのだろう。
「本当にごめんなさいっ……信じてくれてありがとう……っつ…………!」
「ううん。わたしのほうこそ、さっきは騙すような真似をしてごめんね」と、オリヴィアはブルーダイヤの首飾りを私に着けてくれた。
「ふふ……」
侯爵令嬢の周りに黒い影が渦巻いた。卒然と死者のような生臭い悪臭が漂う。
「男爵令嬢が落ちなかったのは想定外だったけど、まぁいいわ。……二人まとめて始末すればいいだけな話ですものね」
次の瞬間、部屋の床全体に巨大な魔法陣が浮き上がって、黒い魔獣の群れが私たちを取り囲んだ。