元皇女なのはヒミツです!

「なぁんですってぇ……!」

 侯爵令嬢の美しい顔がみるみる醜く歪んだ。

「オリヴィア、私――」

「ごめんね、リナ。わたし、はじめはあなたのことを疑って……憎んでいたの。でも、改めてあなたと出会ってからの日々を思い起こしたら、それは間違いだって気付いたわ。リナはわたしの一番大切な友達だから。わたしは……あなたを信じる」

「オリヴィアっ!」

 私は飛びつくように勢いよく彼女に抱きついた。瞳から滂沱の涙が溢れ出る。

 オリヴィアは自身が傷付いても私のことを信じてくれて……なのに、私は自分のことばっかりで、彼女の気持ちも考えずに、なんて酷い仕打ちをしたのだろう。

「本当にごめんなさいっ……信じてくれてありがとう……っつ…………!」

「ううん。わたしのほうこそ、さっきは騙すような真似をしてごめんね」と、オリヴィアはブルーダイヤの首飾りを私に着けてくれた。



「ふふ……」

 侯爵令嬢の周りに黒い影が渦巻いた。卒然と死者のような生臭い悪臭が漂う。

「男爵令嬢が落ちなかったのは想定外だったけど、まぁいいわ。……二人まとめて始末すればいいだけな話ですものね」

 次の瞬間、部屋の床全体に巨大な魔法陣が浮き上がって、黒い魔獣の群れが私たちを取り囲んだ。

< 288 / 371 >

この作品をシェア

pagetop