元皇女なのはヒミツです!
声のほうへ顔を向けると、窓際の席で数人の令嬢たちが一人の令嬢を取り囲んでいた。輪の中心にいる令嬢は涙目で床に座り込んでいた。
「ご……ごめんなさい……」
「あんたねぇ、男爵令嬢の分際であたしの席を取ろうとするなんてなんて図々しい。恥を知りなさい!」
「わ、わたし、知らなくて……」
「知らないぃ~? ふざけんじゃないわよ! いいこと? あたしは伯爵令嬢、あんたは平民上がりの男爵令嬢。身分が違うのだから弁えなさい!」
「は、はい……。申し訳ありま――」
「ちょっと、やめなさいよ!」
私は目の前の理不尽な光景に我慢できずに自然と声を張り上げた。
「おい、リナ」と、セルゲイは私の腕を掴んで制止しようとしたが、振り払って彼女たちのもとへ早足で向かう。身分を笠に着て立場の弱い者をいじめるなんて、許されないことだわ。
「なによ、あんた」
リーダー格の伯爵令嬢が私をギロリと睨み付けた。
「席は好きな場所に自由に座っていいって聞いているわ。あなたに彼女を攻める権利はない」と、私も睨み返す。
「はぁぁぁ? あんた、このあたしに意見するなんてどこの家門よ」
私は一瞬黙ってから、
「……家門はないわ」