元皇女なのはヒミツです!



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「遅いわね……」

「遅いな……」

 一時間はとうに過ぎているのに全く現れる気配のないリナに、グレースとセルゲイは眉を曇らせた。

 リナは約束を守る子だ。特に時間厳守は絶対で、仮に遅れる際には必ず事前に連絡をくれる。しかも彼女は一秒の狂いなく、いつも約束の時間ぴったりに現れるのだった。

 おそらく皇女時代の経験からだろう。
 皇女が動くと同時に周囲の何十という臣下も移動することになるので、予定変更時の影響力が大きすぎる。だから自然と時間を厳守するようになったのだろう……とセルゲイは思っていた。公爵令息の彼自身も自分の予定に合わせて執事や侍女たちの時間も動くことを理解している。ましてや帝国の皇女なんて、関わっている人間が多すぎる。

 そんな彼女が約束の時間に到着しないだなんて……セルゲイは胸騒ぎがした。
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