元皇女なのはヒミツです!

「なにか事件に巻き込まれたのかしら?」

「オリヴィアと一緒だから迷うことはないとだろうし、こんなに人が多い昼間に誘拐なんて起こるはずもないと思うが……」

「でも、オリヴィアの様子がなんだか変だったわ。セルゲイも気付いたでしょう?」

「たしかにそうだが……それは単にリナとぎくしゃくしているからじゃないのか?」

「もうっ、なんで男って鈍感なのかしら! あれは絶対にいつもの彼女じゃなかったわ!」

「まぁ、不穏な感じではあったが……」

 オリヴィアは思い詰めている様子ではあった。でも、それはリナと仲違いしているからなのだろう……とセルゲイは受け取っていた。

「あたし……エカチェリーナ様の手紙を燃やそうとしたとき、なんだかいつもと違う気分になったの。たしかにあの頃は帝国人の平民のことを嫌っていたわ。でも、手紙を掴んだときは、もっと……身体の内側から黒い気持ちが洪水みたいに勝手にどんどん溢れる感じだったの。さっきのオリヴィアの雰囲気もそんな風だったわ」

 セルゲイは目を見開いて、

「じゃあ、今のオリヴィアもあのときの君と同じことをしでかす可能性があるってことか……?」

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