元皇女なのはヒミツです!

 リナが今でもフレデリックのことを想っているのは彼も気付いていた。そこに自分の入り込める隙間は1ミリもないことも……。

 それでも、リナのことが好きだった。
 リーズで再会した当初は一臣下として皇女を支えていこうと決意したが、平民になった彼女は挫けることなく前向きに頑張っていて、令嬢たちの嫌がらせも軽く受け流すような強い子で、いつも明るくて自分に元気をくれて、でもたまには弱音を吐くこともあって……いつの間にかリナのことを好きになっていた。

 リナは愛する人と結ばれることはない。だから、自分が彼女の悲しみを少しでも和らげてあげたかった。溢れんばかりの多くの愛情を与えて、今度こそ彼女を幸せにしてあげたかった。

 だが……、

 それも、もう叶わない。

 リナはきっと、自分ではなくて王太子殿下と手を取り合うのだろう。
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