元皇女なのはヒミツです!
「お兄様!」
アメリアは眉根を寄せてフレデリクを見る。彼は頭を捻って、
「たしかミルズ男爵家はフォード侯爵家の派閥に入ったんだったな……リーナが危ない」
「どういうことですか!?」
セルゲイは思わず声を荒げる。まさか、王太子以外にも彼女の正体に気付いたというのだろうか。それも、敵対勢力の。
フレデリックは唸るような低い声で、
「……皇女の暗殺の可能性があるということだ」
祭の活気づいた空気を高い壁で隔つように、全員が水を打ったように静まり返った。
「な……なにそれ――」
「いたぞ! あそこだ!」
丁度そのとき、王宮の騎士たちが彼らのもとへ向かって来た。
フレデリックは舌打ちをして、
「説明はあとだ。悪いがリーナを助けるのに協力してくれないか?」
彼はアメリアの手を掴んで人混みの中へと駆け出す。
セルゲイとグレースも慌ただしく彼を追った。