元皇女なのはヒミツです!
この一年間はアレクセイさんの奥様のターニャさんから平民として生きていくレッスンを受けていた。言葉遣い、所作、庶民の常識……彼女からは多くのことを学ばせてもらった。
はじめは知らないことばかりで戸惑ったけど、特訓を重ねて今では料理や洗濯も一人でできるようになった。ペンより重たい物を持ったことのない元皇女がじゃがいもの皮を剥いたりシーツを干す姿は我ながら滑稽だったけど、思ったより楽しく過ごせている。まだ洗濯の冷水には慣れないけどね。
フレデリック様からの手紙は城が攻め込まれる直前に機転を利かせた侍女が庭に隠してくれていた。そして革命のほとぼりが冷めた頃にアレクセイさんに頼み込んで代わりに取りに行ってもらった。手紙の束は黒土に覆われて汚れてしまったけど、フレデリック様の言葉の一つ一つは輝いたままだった。
私は一番上の便箋をそっと取り出す。
フレデリック様からいただいた最後の手紙。