元皇女なのはヒミツです!
「家門がない?」
プッ、と伯爵令嬢は吹き出した。後ろの令嬢たちもくすくすと嘲り笑う。
「ねぇ、グレース。この子が例の特待生じゃない?」
「平民の特待生ね。同じクラスなんて嫌ねぇ」
「平民って週に一度しかお風呂に入らないんでしょう? 汚いわぁ」
その伯爵令嬢は周りの令嬢たちの声を一通り聞いてから見下したように私を見て、
「あんた、平民なの?」
「そうだけど」
「あら、では愚かな平民さんに伯爵令嬢であるこのあたしが教えてあげるわぁ! いいこと? 世の中には身分制度というものがあって、下の者は上の者には逆らったらいけないのよぉ? 分かる? 平民さん?」
「そうかもしれないけど、この学園では実力勝負。門をくぐると身分は関係ないって言われているわ」
「あら、そう?」伯爵令嬢は意地悪な笑みを受けべて「その実力とやらだったらあたしは筆記試験24位、実技試験19位よ。……で、そこの床に座り込んでいる男爵令嬢は何位かしらねぇ?」
またぞろ令嬢たちの冷たい笑い声が響いた。
「わ、わたしは……」
座り込んだ令嬢はついに涙を流した。
「それだったら、私は筆記も実技も1位よ。こういうことはやめなさい」
「はぁ~?」伯爵令嬢は仰々しく首を傾げる。「勘違いしないでくれる? 平民の時点であんたは最下位よ。貴族と同列に語る資格はないわ」
「なにを――」
「それを言うなら」
それまで後ろで黙って成り行きを見ていたセルゲイが口を開いた。