元皇女なのはヒミツです!
「ストロガノフ公爵令息」
セルゲイの様子を横目で見ながらフレデリックは呟くように彼の名を呼んだ。
「は、はい」と、セルゲイははっと我に返って答える。
フレデリックはニコリと笑って、
「リーズに来てからこれまで、リーナのことを守ってくれてありがとう」と、礼を言った。
「い、いえ! とんでもないことです。皇家の臣下として当然のことですから」
「君にはとっても感謝しているよ」と言って、フレデリックは口をつぐむ。
セルゲイは王太子の言わんとすることを察して、黙り込む。
ストロガノフ公爵令息には心から感謝している。危うい立場の皇女を側でずっと見守ってくれていたからだ。
だが、フレデリックは公爵令息が皇女に恋慕の情を抱いていることも分かっていた。
彼には悪いが……リーナは譲れない。
婚約者である自分だけが間抜けにも最後まで彼女の正体に気付かなくて忸怩たる思いではあるが、どんなに恥知らずだと罵られようとも、彼女は誰にも渡さない。