元皇女なのはヒミツです!
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満身創痍の私は、ふらふらとその場で膝を突いた。魔力が枯渇しかけて、呼吸が荒くなる。酸素が欲しい。身体に力が入らない。
なんとかオリヴィアを守れたけど、次はない。
「リ、リナ……」
「大丈夫よ。私はまだ大丈夫……」
私は自身に暗示をかけるように呟いた。大丈夫、まだ死んでいないし、意識もある。最後まで戦わなければ……。
出し抜けに、侯爵令嬢が私のもとに向かってきた。私は構えようとするが、重い肉体は動かない。
――バシッ!
侯爵令嬢は私の顔を思い切り引っ叩いた。弱った身体の私は抵抗できずに倒れ込む。
更に彼女の細い足が私の頬を踏んづけた。
「本当に生意気な女だわ。虫酸が走る……」
「っつ……!」
「リナっ!」
オリヴィアが私に駆け寄ろうとするが、侯爵令嬢の魔法に弾かれた。
ヒールの踵が左頬に食い込む。痛い。悔しい。涙が溢れ出る。
でも……こんな下劣な人間に負けたくない。
「魔獣ではなくて、わたくしが直々に殺してあげるわ」
侯爵令嬢の右手に黒煙の渦が巻く。
「死になさい」
そのときだった。
瞬間的に眩い光線が私の前を通り過ぎた。それは侯爵令嬢に直撃して、彼女は数メートル先に飛ばされた。
はっとして扉のほうを見ると、フレデリック様が立っていた。