元皇女なのはヒミツです!

「舐めているのか……?」

 フレデリック様の顔が一層険しくなった。

「そんな、怖い顔をなさらないで。わたくしたちはこれから夫婦になるのですし」

「ディアン・ルーが守護神のリーズの王族が闇魔法の持ち主と婚姻するわけないだろう」

「因縁のある光魔法と闇魔法の使い手が添い遂げるなんて素敵ではありませんか。まさしくリーズ王国の歴史を塗り替える美挙ですわ。わたくしたちで新たなリーズ国の物語を作るのです」

「はっ、反吐が出るな。第一、僕の婚約者はリーナだ。お前はお呼びでない」

「まぁっ、またそんな勝手次第なことをおっしゃって。国王陛下からも王太子としての自覚を持ちなさいと、言われてますでしょう? いけませんよ、殿下」

「……父上への差金も、お前の仕業か」

「あら、ばれちゃいました?」侯爵令嬢はくすりと笑って「国王陛下は政の腕はたしかですが、魔力は全然ですね。簡単に落ちましたわ」

「お前は自分でなにを言っているのか分かっているのか? 国王に暗示を掛けるなんて重罪だぞ」

「もちろんですわ。殿下もいずれわたくしが魔法で魅了して差し上げますからご安心くださいませ。大丈夫ですわ、すぐになにも考えられなくなって、わたくしの操り人形になるだけですから。――でも、その前に……」

 侯爵令嬢はおもむろに私に目を向けて、

「二人の輝く未来に邪魔な皇女に消えてもらいませんと!」
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