元皇女なのはヒミツです!
「フレデリック様!」
私は彼に目配せをする。彼はこくりと短く頷いた。
狩り大会のときを思い出す。フレデリック様と初めて一緒に戦った日。互いの魔力を溶かし合うように呼応させて、初めて彼と心が通った気がした、あの日。
今も、彼の考えていることが魔法を通じて伝わってくる。
次は彼の渾身の一撃が来る。私はそれに自分の魔法を繋ぐのだ。
「この死にぞこないがあぁぁぁぁぁっ!!」
侯爵令嬢は亡者のような恐ろしい形相で、私に向かって来た。私は逃げずに冷静に詠唱を続ける。
「お前の相手は僕だ!」
フレデリック様が巨大な柱のような光魔法を彼女に放った。侯爵令嬢は振り返る。防御。弾かれた。
刹那、私は床から天井まで届くような大きさの氷の鏡を数枚ほど弧を描くように構築した。それらの中心には侯爵令嬢。
弾かれた光魔法は氷の鏡を反射して広がって、中央の侯爵令嬢に飛んで行く。更にフレデリック様が止めを刺すように、もう一発魔法を放った。四方八方から取り囲まれるように魔法が迫ってくる彼女の逃げ場は、もうない。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」
次の瞬間、視界が真っ白になった。