元皇女なのはヒミツです!
「俺は筆記3位、実技2位、そしてストロガノフ家の者だ。こんな馬鹿な真似はもうやめろ」
「なっ……!」
令嬢たちははっと息を呑んだ。
「ストロガノフですって? あの、ストロガノフ?」
「グレース、ストロガノフ家が出てきたら勝ち目はないわよ」
「名門で成績優秀で……それになんて美形なのかしらぁ!」
彼女たちは今度は打って変わって色めき立った。きゃあきゃあと黄色い声を上げている。
無理もない。大陸一巨大なアレクサンドル連邦国でも一番の名門ストロガノフ公爵家は圧倒的な影響力を持ち、小国の王家よりも力が強いのだ。
「帝国人……」と、伯爵令嬢は周りの聞こえないくらいの小さな声で呟いたあと、
「ふんっ!」
セルゲイのことをきっと睨め付けると今度は私のほうを向いた。
「さすが平民さん。もう男を誑し込むなんて、なんて尻軽な女。怖いわぁ!」
「は?」
「俺も彼女もアレクサンドル人だ。同郷の者同士で懇意にするのは自然のことだろう」
「なによ、帝国人のくせに! 皆さん、行きましょう? これ以上平民と同じ空気を吸いたくないわぁ!」と、捨て台詞を吐いて伯爵令嬢一味は去って行った。