元皇女なのはヒミツです!
「セ――」
「皇女殿下」と、彼は朗々と私の名前を呼んで跪いて頭を垂れた。
あぁ、決別の時がきた……と身にしみる。
私たちはもう振り返らない。
「頭を上げなさい」と、私は皇女として彼に言葉をかけた。
セルゲイはゆっくりと顔を上げて私を見て、
「皇女殿下、少し早いですがご婚約おめでとうございます。……臣下として、とても嬉しく思います」
「そう……」
私は少し言葉に詰まった。
リーズに来てからはセルゲイに頼ってばかりだった。もし、入学試験の日に彼と出会わなければ私は今頃傷心のまま連邦国に帰国していたのかもしれないし、最悪侯爵令嬢から殺されていたかもしれない。
彼は私の大切な……友達だ。
「セルゲイ・ミハイロヴィチ・ストロガノフ。此度は大変大義でした。心より……心より感謝します。本当にありがとう」と、私は噛み締めるように言った。
告白の返事はしない。今の自分と彼の立ち位置がその答えだ。
傷付けてしまってごめんなさい。でも、私はフレデリック様と共に歩んでいくと決めたから……。
「恐れ入ります、殿下」と、セルゲイは再び一礼をした。これが彼の返事。
それで、おしまい。