元皇女なのはヒミツです!


 そして、午後からの入学式。
 大ホールで執り行われた式典には国王陛下も来賓された。
 陛下は私の未来のお義父様になられる予定の方だったのね……と他人事のようにぼんやりと眺めていると、隣に座っているセルゲイから肘で突かれてはっと我に返った。
 慌てて前を見ると、司会の先生が「在校生代表、挨拶」と読み上げているところだった。
 すると、舞台の端から優雅な足取りで一人の令息が中央に向かって歩いて来た。その姿に私は目を見張った。

 あれは、私に挽肉の包み焼きを買ってくださった貴族の方だわ!

 驚きのあまり思わず立ち上がりそうになる。一度見たら忘れられないその容貌は壇上でも燦然と輝いていた。令嬢たちがざわめき、先生が注意していた。
 彼はこの学園の生徒だったのね。今度、改めてあのときのお礼を言わなければ――、

「皆、入学おめでとう。私はこの学園の生徒会長のフレデリック・リーズだ」

 その瞬間、私は目を見張って硬直した。
 時が止まる。
 息をするのも忘れてひたすら瞳で彼を追った。もう他にはなにも見えなかった。
 そしてポロポロと自然と涙が溢れ出て、視界が濁って、堪らず俯いた。

 やっと……やっとお会いできた。
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