元皇女なのはヒミツです!
◆◆◆
「「ピクニック?」」
翌日、グレースとオリヴィアは週末に出掛けないかと早速二人を誘ったのだった。
「そうよ! リーズはもう少ししたらまた雨の日々になるでしょう? 天気のいい今こそ自然と触れ合うのよ!」
「王都から少し離れた場所にお父様が別荘を購入したの。良かったら来週末に皆で行きましょう?」
「へぇ、楽しそうだな。な、リナ?」
「そうね。そういえばリーズに来てから学園と勤め先ばかりだったわ。たまにはこういうのもいいかも」
「じゃあ決まりね! 楽しみにしているわ」
「セルゲイ! こっちよ!」
放課後、グレースはこっそりとセルゲイを人気のない場所へと呼び出していた。
彼はうんざりした様子でため息をつく。
「なんだよ。もうエカチェリーナ殿下のことは喋り尽くしたぞ」
「違うの! 今度のピクニックのことよ!」
「はぁ?」
グレースはニヤリと笑って、
「あんた、ピクニックでリナをモノにしなさい!」
「はぁあああっ!?」
「しっ――聞こえるわ。いいこと? ピクニックで絶対にリナを落としなさいよ! あたしたちも手伝うから」
「いや、お前に協力されると逆に不安だわ。つーか……な、なんなんだよ、突然…………」と、セルゲイはみるみる顔を赤く染める。
「いいから、いいから。あんたがリナのことを好きだなんて知ってるから」
「なっ……!?」
セルゲイは凍り付いた。オリヴィアはともかく、お馬鹿なグレースにまで気付かれているとは……最悪である。
「あんた……クラス中の人間が察しているわよ」と、グレースは呆れた顔で言った。
「う、嘘だろ……」
「本当よ! ――それで、あたしもオリヴィアもリナが幸せになるにはセルゲイが必要不可欠だという結論に達したのよ。だから、絶対に落とすのよ!」
「いや、早計だろ。俺は卒業までじっくりと時間を掛けてリナと――」
「駄目駄目! それじゃあ遅すぎるわ! 王太子殿下を諦めたリナは今は実質フリーなのよ。リナの優秀さに国内の貴族も注目しているわ。一旦どこかの下位貴族の養子にしてから息子に嫁がせようと画策している高位貴族もいるんだから! 仮にそうなったら厄介でしょう? 平民の彼女は貴族の命令には逆らえないし、それにいつ皇女様だってばれるか分からないし」
「た、たしかに……」セルゲイはたちまち青ざめた。「あんなに可愛くて優秀なリナは貴族にも引く手数多だろうな」
「だからあんたがその前にリナを捕まえておくのよ! 恋人があのストロガノフ家の令息ならリーズのどの貴族も手出しできないわ。そして卒業したら直ちに結婚しなさい!」
「けっ……」
セルゲイの顔が再び真っ赤になる。
「分かったわね? 覚悟を決めなさい!」
「お、おう…………」
こうして、グレース主導の計画は順調に進んでいくのだった。