元皇女なのはヒミツです!

5 炎の道を行く

「うわぁ~! 水が澄み切っていて綺麗ね、オリヴィア!」

「そうね」

「風も涼しいし、気持ちいわ――きゃっ!」

 ドン、と鈍い音がしてボートに衝撃が走った。端にある柵にぶつかってしまったのだ。

「ごめんなさい! オリヴィア、大丈夫?」

「大丈夫よ。リナのほうこそ怪我は?」

「私は問題ないわ。ボートを漕ぐのって難しいのね」

「慣れるまでは中々ね。今度はわたしが代わるわ。――と言っても、わたしもまだ上手く漕げないんだけど」

 私はオールをオリヴィアに託した。
 彼女は上手く操縦して柵から離れて広い水面に出る。ちょうど強めの風が吹いてきて、進行方向が少しだけ曲がってしまう。それでも私より器用にオールを動かして、滑らかに前へと進んで行った。


「本当に違うんだっ、リナ!」

「うぅ……娯解なんですぅ……エカチェリーナ様ぁっ!!」

 後ろから、セルゲイとグレースの乗ったボートが近付いてきた。漕いでいるのはセルゲイで、すいすいと私たちの乗ったボートに迫って来る。

「……別に。私は関係ないわ。二人で楽しくデートでもすれば。裸になって」と、私はつっけんどんに答えた。オリヴィアが「えっ?」と目を丸くする。

 さっきの光景を思い出しただけで無性に腹が立ってきた。
 上半身が半裸のセルゲイと馬乗りになっているグレース。……なんなのよ、あれは。この二人のことだからきっとふざけていたんでしょうけど、なんだか見ていて面白くない。なんでわざわざシャツを脱ぐ必要があるの? バッカみたい!
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