元皇女なのはヒミツです!

6 炎の道を行く

 フレデリック様からのお手紙を燃やすことは、グレースから何度も「本当にいいの?」と確認された。
 その度に私は「構わない」と答えたわ。だって、手紙という形あるものが残っていると、いつまでも過去を引きずって生きそうだったから。

 「リナ」になった私には……もう、必要ないわ。

 グレースは炎の魔法を唱えて、そっと手紙に灯す。青白い光が幻想的で綺麗だった。まるで雪景色を照らす月の光みたい。
 私はその光に魅入って、瞬きせずにじっと見つめていた。
 手紙はじわじわ、じわじわと黒い灰になって消えていく。
 同時に、私の気持ちも煙のように遥か彼方へ飛んで行ってしまった。

 身体が軽くなった気がした。

 ……これでいい。

 私は、もう先を進むわ。



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