元皇女なのはヒミツです!
ずっとお目にかかりたかったフレデリック様が今、目の前にいる。
遠いアレクサンドル連邦国からリーズ王国へ来て、魔法学園に入学して、私はこんなに彼の近くまで来られた。
でも……、
こんなに近くにいるのに、なんてこんなに遠いのだろう……。
平民である私は、恐れ多くも一国の王太子殿下に声を掛けることなんて決して許されない。
私たちの距離が縮まることは、ない。
涙は堰を切ったようにどんどん流れてくる。
アレクセイさんが言っていた「私が惨めな思いをする」という言葉の意味が胸に深く突き刺さった。
耐えられると思っていた。フレデリック様の姿を遠くから拝見できたら、それだけで満足してこの想いに踏ん切りがつくのだと思っていた。
でも、駄目……。
願いが叶ってやっと巡り合えたら、今度はもっと近くにいたいと思ってしまう。もっと彼のお側にいたいと思ってしまう。
もっと、もっと――……。
私はもう感情の制御ができなくて無様にも式典中ずっと泣き続け、その間もセルゲイが優しく背中を撫でてくれた。