元皇女なのはヒミツです!

7 炎の道を行く

「もーっ! 二人してどこに行っていたのよ!」

「ごめんなさい。あの人混みはちょっと……ねぇ?」

「そうよ! リナとセルゲイが抱き合ってたなんて、あたしたち見ていないわ!」

「しっ、グレース!」

「あっ!」

「ぐっ……!」

 私はビクリと身体を強張らせる。
 やっぱりわざとね、この二人は。もうっ、本当にお節介なんだから。最近やたらと私とセルゲイを二人きりにさせようとするのよね。油断できないわ。

「…………」

 セルゲイのほうをチラリと見やると、彼は何事もなかったかのようにグレースと軽口を叩き合っていた。
 ちょっとだけ寂しい気持ちになる。さっきは抱き合う形になっちゃって、すっごく恥ずかしかったのに……意識しているのって私だけなのかしら……。

 彼には私の気持ちはまだ言えていない。なんとなく機会を逃してしまって、私たちは未だ「友達」のままだ。
 フレデリック様の手紙を処分したこともグレースから聞いているはずなのに、それについて私には一言も言及してこない。
 モヤモヤしている胸の奥がチクリと痛んだ。
 

「リナ、行きましょう?」

「えっ」

 はっと我に返ると、オリヴィアが私の袖をぐいぐいと引っ張っていた。

「もう~! 聞いていなかったの? きっとミルキーウェイ・リヴァーも混雑するだろうから屋台を見ながら早めに向かおうって」

「あ、ごめんごめん。考え事をしてたわ」

「もうーっ!」

 オリヴィアは出し抜けに私の耳元にそっと近付いて、

「今日こそはちゃんとリナの気持ちを伝えるのよ?」

「えっ……?」

 彼女はにっこりと笑っただけで先に歩き始めた。
 私は急激に顔が熱くなった。
 気持ち!? 今日!? 夜には帰るからあと数時間しかないじゃない!
 ま、まだ心の準備が……。
 オリヴィアったら、なにを突然言ってるのよ……!

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