元皇女なのはヒミツです!
「うわぁ~、もう人だかりが出来てる!」
「こんなに大勢の人がいたんじゃ全然ロマンチックじゃないかもね」
「ねぇ、ここにいるカップル全員が揃って蝋燭越しにキスするの? なにかの宗教なの? バカなの?」
「グレースもいつかその中に入れるといいな」
「あたしは敢えて恋人を作らない主義なのよ! 貴族令嬢は忙しいの! あたしは伯爵令嬢ですからね!」
「はいはい」
ミルキーウェイ・リヴァーに着いた頃はまだ少し明るかったけど、人はそれなりに集まっていた。
私たちは他愛もない話をしながら、ぶらぶら歩く。
そのうちに、辺りはだんだんと暗くなってきた。
仄かに明かりが灯り出す。群衆からわぁっと歓声が上がる。私たちも輝く川の様子に目を奪われた。キラキラと流れるように明滅するする川沿いは、まるで星空の中に入ったようだった。
景色はすっごくロマンチックなんだけど……。
「人、多過ぎ」と、私は思わず呟く。
「そうね」と、オリヴィアが頷いた。
「ねぇ、本当にここのカップルが一斉にキスするの? やっぱり宗教よ、宗教。こわっ!」とグレース。
「そんなこと言って、グレースは恋人ができたら絶対にここに来るわね。断言するわ」
「わたしもそう思う」
「はあぁ? あたしはこんな馬鹿げた行為なんてしないわよ!」
「「絶対にするわ」」
「しないって!」
「……さて、そろそろ行くか」
出し抜けにセルゲイが私の腕を掴んだ。
「えっ!?」
私は突然のことに驚いて目を白黒させる。
「セルゲイ、どうしたの?」と、オリヴィアが尋ねる。
彼はニカッと笑って、
「VIP席、予約しといた」