元皇女なのはヒミツです!








「いいのか?」

 セルゲイが確認するように私の顔を覗き込んだ。

「うん……いいの。私は、リナとして生きて行くことに決めたから」

「そうか」

 少しだけ、目を伏せた。湧き上がる複雑な感情はついにほどけて、ヒラヒラとどこかに飛んで行ってしまった。

 そして意を決して、顔を上げる。そこにはセルゲイの顔。見慣れた相貌をじっと見つめる。
 これから自分の想いを口にするのだ。
 鼓動が早くなった。

「私の……本当に大切な人のことが分かったから」

「えっ?」

 私はセルゲイの大きな手をぎゅっと握った。

「それはあなたよ、セルゲイ」

「っつ…………!」

 セルゲイは口を噤む。いつもは澄ましているような彫刻みたいな綺麗な顔が、微かに震えていた。

 やっと気付いたのだ。私の側にいつもいてくれて、見守ってくれて、時には叱られたり、時には喧嘩もするけど、でも……私が一番大切な人は――…………、


「セルゲイ、私はあなたが好き」
「おっ……俺も好きだ。大好きだ、リナ!!」


 セルゲイは飛び込むように私に抱き着いた。強く、強く抱き締める。

「苦しい……」

「あっ、ごめん」

 私たちは少しだけ身体を離した。でも、お互いの腕はしっかりと絡めたまま。

 そして、

 互いに自然と顔を寄せ合って、



 キスをした。



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