元皇女なのはヒミツです!
「ねぇ、セルゲイ。よく考えて?」
「これは熟考に熟考を重ねてからの決断だ」
「私はあなたを不幸にさせたくない」
「リナと一緒にいられるのなら、それは世界一幸せなことだけど」
「まっ……またそんなこと言って! 真面目に考えて!」
「だから、ちゃんと将来のことは考えてるって」
「平民になったら、もう家族とは会えなくなるかもしれないのよ? 身分が違いすぎるわ」
「それも承知の上だから。俺にはリナと、いずれ生まれる予定の子供たちがいる。それが俺の家族だ」
「ばっ……!」
かっと顔が赤くなって、絶句してしまう。
子供って……な、なにを言っているのかしら?
「ねぇ、だったらリナはあたしの家門に養子に入ったらいいんじゃない? そうしたら伯爵令嬢と公爵令息で釣り合いが取れると思うわ」出し抜けにグレースが瞳を輝かせながら割って入る。「リナとあたしは双子の姉妹よ! それで行きましょう!」
「いや、全然似てねぇだろ」
「似てるわっ! あたしたちは仲良し姉妹なの~!」と、グレースは私に抱き付く。全く、今日も鬱陶しいわね。
「なにが姉妹だよ。こんな手のかかる妹はリナには要らねぇよ」
「はあぁぁぁっ!?」
「グレース、気持ちはとっても嬉しいけど、仮に私の正体が露見したら、あなたの家族の命も狙われる可能性があるわ。そんな危険な状況に、あなたを巻き込めない」
「えぇ~っ! せっかくリナと双子になれると思ったのに~!」
「似てねぇっつーの。リナのほうが普通に可愛いだろ」
「ちょっ……セルゲイ!!」
「まぁっ!?」
そんなわけで、私とセルゲイの話し合いはずっと平行線でなにも進展しなかった。
このままだと彼が本当に平民になってしまうと悩んでいたとき、アレクサンドル連邦国からセルゲイに急な来客があったのだ。
「おい、セルゲイ! 一体どういうことだっ!?」
彼の兄であるストロガノフ家の次男――イーゴリ・ミハイロヴィチ・ストロガノフ公爵令息の電撃訪問である。