元皇女なのはヒミツです!


「ねぇ、セルゲイ。よく考えて?」

「これは熟考に熟考を重ねてからの決断だ」

「私はあなたを不幸にさせたくない」

「リナと一緒にいられるのなら、それは世界一幸せなことだけど」

「まっ……またそんなこと言って! 真面目に考えて!」

「だから、ちゃんと将来のことは考えてるって」

「平民になったら、もう家族とは会えなくなるかもしれないのよ? 身分が違いすぎるわ」

「それも承知の上だから。俺にはリナと、いずれ生まれる予定の子供たちがいる。それが俺の家族だ」

「ばっ……!」

 かっと顔が赤くなって、絶句してしまう。
 子供って……な、なにを言っているのかしら?

「ねぇ、だったらリナはあたしの家門に養子に入ったらいいんじゃない? そうしたら伯爵令嬢と公爵令息で釣り合いが取れると思うわ」出し抜けにグレースが瞳を輝かせながら割って入る。「リナとあたしは双子の姉妹よ! それで行きましょう!」

「いや、全然似てねぇだろ」

「似てるわっ! あたしたちは仲良し姉妹なの~!」と、グレースは私に抱き付く。全く、今日も鬱陶しいわね。

「なにが姉妹だよ。こんな手のかかる妹はリナには要らねぇよ」

「はあぁぁぁっ!?」

「グレース、気持ちはとっても嬉しいけど、仮に私の正体が露見したら、あなたの家族の命も狙われる可能性があるわ。そんな危険な状況に、あなたを巻き込めない」

「えぇ~っ! せっかくリナと双子になれると思ったのに~!」

「似てねぇっつーの。リナのほうが普通に可愛いだろ」

「ちょっ……セルゲイ!!」

「まぁっ!?」



 そんなわけで、私とセルゲイの話し合いはずっと平行線でなにも進展しなかった。
 このままだと彼が本当に平民になってしまうと悩んでいたとき、アレクサンドル連邦国からセルゲイに急な来客があったのだ。

「おい、セルゲイ! 一体どういうことだっ!?」

 彼の兄であるストロガノフ家の次男――イーゴリ・ミハイロヴィチ・ストロガノフ公爵令息の電撃訪問である。

< 358 / 371 >

この作品をシェア

pagetop