元皇女なのはヒミツです!
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私たちを乗せた場所は、ゆっくりと首都を進んで、ついにストロガノフ邸に到着した。
門をくぐると、にわかに緊張感が襲って来る。背中がぴりぴりと痺れた。
これから、平民の私が公爵家の方々とお会いすることになるのか……。きっと愛する息子を奪った憎い平民……なのよね。うぅっ、気まずいかも。
「あー、エカチェリーナ殿下の姿を見たら皆驚くだろうなぁ~」
イーゴリ卿がくつくつと笑った。
「はっ? 兄上、事前に知らせなかったのか!?」と、セルゲイは目を丸くする。
「こういうのはサプライズの方が面白いだろう?」
「いや……さすがに駄目だろ。畏れ多くも皇女殿下だぞ」
「あの堅物の父上や兄上が驚く姿、楽しみだなぁ~」
「怒られても知らねぇぞ、俺」
「ふふっ」
二人の兄弟のやり取りについ顔が綻んでしまう。そういえば、イーゴリ卿は三兄弟の中で一番ユーモア溢れる方だったわ。お陰で少しは緊張が解けたかしら。
「あ、そうだ、殿下。面会までフードを被っていていただけますか? きっと、その方がインパクトがあって良いですよ」
「兄上!」
「ふふっ、分かりましたわ、イーゴリ卿」
「リナも悪い冗談に乗らなくていいから」
「さぁ、玄関に着きました! 殿下、どうぞどうぞ」
イーゴリ卿が私の手を取ろうとすると、
「俺の婚約者なんで」
セルゲイがさっと兄の手をはたいて、私の手を握った。