元皇女なのはヒミツです!
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「では父上、俺たちの婚姻を認めていただけますでしょうか?」
穏やかなお茶会が一息ついた頃、セルゲイは改まって父に尋ねた。
公爵はおもむろに持っていたティーカップをソーサーに戻して、息子を見つめた。
少しの沈黙。
私もセルゲイも姿勢を正して、固唾を呑んで公爵を見つめ返す。
「……男爵だ」
ややあって、公爵がポツリと呟いた。
「男爵……ですか?」と、セルゲイが目を丸める。
「私の持っている爵位の一つにアレンスキー男爵位がある。それをお前に譲ろう。男爵では、平民の妻を娶っても問題ない」
「っ……!」
私たちは思わず目を合わせる。セルゲイの瞳は喜びが宿っているように爛々と輝いていた。私も、じんわりと目頭が熱くなってきた。
「「ありがとうございますっ!!」」
「これが私にできる最大限のことだ。――殿下、誠に恐縮ですが、今もあなたの存在は連邦国にとって脅威です。大変……大変心苦しいですが、あなた様は男爵夫人として一生を終えていただきます」
「私は構いませんわ。むしろ、平民のままでなくて貴族にしてくださって感謝します。これでセルゲイ公爵令息様も、これからも堂々とストロガノフ家の門をくぐることができると思うと、胸を撫で下ろせますわ」
「恐れ入ります、殿下。――セルゲイ、我々は表立っては殿下をお支えすることができない。だから、死んでもお前が殿下をお守りするように。頼んだぞ」
「もちろんです、父上!」
「え、父上。俺の爵位は?」と、出し抜けにイーゴリ卿が声を上げる。
「お前は騎士の身分があるだろう」
「いやいやいや、俺は次男なんだけど。子爵か伯爵くらいくれよ」
「お前……仲間とつるんで領地で法律の規定以上の狩りを行っているらしいな? 金まで取って」
「あー、一生騎士として頑張りまーす」