元皇女なのはヒミツです!
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「リナ、うちの家族が色々と騒がしくて済まなかったな」
楽しい宴も終わって、私とセルゲイはバルコニーで二人きりで星空を眺めながらお喋りをしていた。
昼間のお茶会のあとは、公爵夫人が私のドレスを作ると言い張って採寸やデザインの選定などで……とっても大変だったのだ。ぐったりしていると、もう晩餐の時間で、またもやガヤガヤと賑やかな時を過ごしたのだった。
「ううん。相変わらずストロガノフ家は楽しい家族よね。貴族では珍しいくらいに」
「そうかもな」と、彼は苦笑いをした。
「でも、羨ましいわ。とっても」
星空が綺麗な夜だった。
「……俺たちも、作ろう。いつまでも笑い合えるような家庭を」
「えっ?」
驚いて夜空から目を離して隣を向くと、セルゲイは真剣な表情でじっと私を見つめていた。
その瞳には星よりも熱い光が灯って、私はどきりと強く鼓動が鳴った。
「ちゃんと言っていなかったから」
彼はおもむろに跪いて私の手を取る。
「私、セルゲイ・ミハイロヴィチ・ストロガノフは一生あなたを大切にすることを誓います。エカチェリーナ・ニコラエヴナ・アレクサンドル皇女殿下……私の妻になっていただけませんか?」
刹那、なにかが弾けたように、みるみる涙が頬を伝った。
でも、悲しい涙じゃない。
自然と顔が綻んで、私は夜空に響くくらいに、元気よく答えた。
「えぇ、喜んで!」
こうして、私はリナ・アレンスキー男爵夫人として生きることとなる。