元皇女なのはヒミツです!

「こ、婚約者……!?」

 不意の衝撃で頭がガツンと殴られた気分だった。
 ついにこのときが来たか……と、私は愕然とした。矢庭に指先が冷たくなって震えが止まらなくなる。
 でも、これは当然の流れだ。一国の王太子が婚約者がいない宙ぶらりんの状態のままなのは非常に宜しくない。だからすぐに新たな婚約者ができるのは仕方のないことなのだ。

「あら? あんた、本当に王太子殿下に惚れちゃったの?」グレースはくすりと笑って「平民が愚かだわぁ! ほら、帝国人ならあんたも知っているでしょう? 王太子殿下にはエカチェリーナ・ニコラエヴナ・アレクサンドル様という立派な婚約者がいらっしゃるのよ!」

「えっ……!?」

 私は目を丸くした。
 ど……どういうことかしら? 私たちは既に婚約解消になったのよ。連邦国から遠いリーズ王国にはまだ情報が届いていないのかしら?
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