元皇女なのはヒミツです!
「皇女殿下は死亡したから婚約は解消になったんだが……」と、セルゲイが口を挟む。
「はあぁ? あんた、帝国の高位貴族のくせになにも知らないの?」
「帝国じゃない。連邦国だ。……皇族はもういない」
「ふぅん。ま、どちらでもいいけど。いいこと、無知なあんたたちに教えてあげるわ。皇族の中でもエカチェリーナ様だけは死体が見つかっていないの。だから皇女様は今もどこかで生きているのよ!」
「皇女殿下の死亡は連邦政府より公式に発表されている」
「そんなの、本当かどうか分からないわ」
「公式では事実だ」
「はぁ? だって王太子殿下は今もエカチェリーナ様を探しているのよ。先日は長期休みを利用してはるばる帝国にまでご自身で捜索に行かれたらしいわ!」
「えっ……フレデリック様が……?」
私は動揺を隠せずに震え声で呟いた。
では、あのとき出会ったのは私を探しに行く途中だったの? わざわざ遠い連邦国にまで来て下さったの?
「ちょっと平民! 王族の名前を口にするなんで無礼よ! ちゃあんと王太子殿下とお呼びなさい!」と、グレースが怒鳴る。
「あ……ご、ごめんなさい……」
「全く。これだから礼儀を知らない平民は。いいこと? 王太子殿下にはエカチェリーナ様がいらっしゃるんだから、馬鹿な考えはおよしなさいよ!」
「本当、身の程知らずな平民」
「無様ね、平民」
グレースたちは勝ち誇ったように高笑いをしながら去って行った。