元皇女なのはヒミツです!
グレースは今度は顔を真っ青にしてガクガクと小刻みに震えている。下手な王家より強い大貴族のストロガノフ家は伯爵家が太刀打ちできる相手ではない。
セルゲイは追い打ちをかけるように、
「もうお前ら三人には一生うちのドレスは売らないからな。一生だ、一生」
「「えぇえぇっ!?」」
ジェシカとデイジーが素っ頓狂な声を上げた。
「だって、二人もそこの伯爵令嬢と一緒にリナに嫌がらせをしていただろう?」
二人は首をぶんぶんと横に振って、
「じっ……ジュースを掛けたのはグレース一人だけよ!」
「そうよ! わたしたちはなにもやっていないわ!」と、全力で否定した。
「ち、ちょっと、あんたたち! あたしを裏切る気っ!?」
グレースが金切り声で叫ぶ。
「だって……ねぇ?」
「憧れのエレーナのドレスを着られないなんて……ねぇ?」
「あんたたちぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」
グレースはまたもや顔を真っ赤にさせた。
「おいグレース、これからは俺の家の生地も買うなよ」
「買わないわよっ!!」
あら、自棄になって開き直ったわ。
「グレースが今している髪留めの絹のリボン、ストロガノフの絹糸でしょ? あなた、前にパーティーに付けて行くって自慢してたじゃない」と、私も追撃する。
「取ればいいんでしょ! 取ればっ!」
――そのときだった。
「なにをしている」
朗々とした令息の声が響いた。
声のほうに顔を向けると、フレデリック様が険しい表情でこちらを見ていた。