元皇女なのはヒミツです!
そして今日は登校して席に着くなり、呆れた光景にうんざりしてため息をついた。
私の机には「平民」「男たらし」「退学しろ」「淫売」「娼婦の娘」……などの罵詈雑言が書かれていた。グレースをはじめとする令嬢たちが可笑しそうにこっちを見ている。
全く、こんな子供みたいな遣り口で私が傷付くと思っているのかしら。昨日みたいに堂々と私に戦いを挑んだ令息たちのほうが誇りある貴族らしくてまだ良かったわよ。
「リナ、おはよ――おい、なんなんだ、これっ!」
遅れて登校してきたセルゲイが血相を変えて叫んだ。
「お前ら! こんな陰湿なことをして貴族として恥ずかしくないのかよっ!」
「あら? あたしたちがやったって証拠はあるのぉ~?」と、グレースがくすりと笑う。
「日頃の行いが悪いから疑われているんだろうが!」
「それだったら、そこの平民さんも日頃の行いが悪いから落書きをされたんじゃなくって?」
「勝手にお前達が彼女に嫉妬しているだけだろ……見苦しい……!」
セルゲイは眉を吊り上げて拳を握りしめながら打ち震えていた。
「セルゲイ」私は彼の怒りを鎮めるようにそっと拳に手を置く。「私は大丈夫よ。庇ってくれてありがとう」
「掃除道具を取って来る」
「魔法でなんとかなるからいいわ」